ナスはどこから来たの

「ナス」は、インドの東部が原産地ではないかと考えられている野菜です。冬は大根、夏はナスとして日本では古来から食卓に上っている人気者です。

 ナスが日本に渡来したのは、奈良時代かそれ以前と考察されており、正倉院の文書に天正勝宝2年(750年)茄子を進上したという記録が残っています。また、平安時代の『延喜式(えんぎしき)』(全50巻、約3300条からなる。律令官制を記している)という本にも、ナスのつくりかたが記されています。

 時代が下って、江戸時代。現在の静岡県では、ナスを栽培して徳川家康にナスを献上していたと言われています。

 現在、JAしみず管内では、明治になって途絶えていた徳川家に献上していたナスを復活させ「折戸なす」という特産品を栽培出荷しています。

 この「折戸なす」は、形が丸く果肉が緻密で、原種のナスに近いためトゲが鋭く、ナスらしいコクのある濃厚な味わいが特徴です。

ナスの種類

日本では数種類のナスが栽培されています。

「大長ナス」<久留米長(くるめなが)や博多長(はかたなが)等。>

「長ナス」<秋田県の河辺長(かわべなが)、岩手県の南部長(なんぶなが)、大阪府の大阪長(おおさかなが)、宮崎県の佐土原(さどわら)等。>

「卵型ナス」<かつて、関東でよく出回っていた。>

「丸ナス」<京都府の賀茂なす、新潟県の巾着なす等。>

「小丸ナス」<山形県の「民田(みんでん)等。>

「米ナス」<ヨーロッパ、アメリカの品種を日本でつくりやすいように改良したもの。>

 そして、現在、最も多く全国的に栽培されている、昭和39年に生まれた「千両」「千両二号」という「中長ナス」があります。

色が濃くても淡黄色野菜

 ところで、ナスが淡黄色野菜に分類されているのをご存じでしょうか。「えっ、あんなにはっきりした色がついているのに?」と思う方も多いと思います。

 緑黄色野菜、淡黄色野菜は野菜の色の濃淡のことではなく、可食部100g中にカロチンが600μg以上含まれているかどうかで厚労省が決めた基準による呼称です。含まれているものを「緑黄色」、それ以外のものを「淡黄色」としました。それにしても、「色」なんていう紛らわしい字を使っているので、「色が濃いのに淡黄色」なんて言われても、「なんで?」と首をかしげたくなってしまいます。ナスの表面を構成する色素は「アントシアニン」と呼ばれるポリフェノールの一種で、最近の研究で目に良いということがわかってきました。

ナスには無駄がない

 ちなみに、「ナス」という呼び名ですが、夏に実をつけるので「夏実」(なつみ)と呼ばれ、それが「奈須比」となったとか、味に酸味があるので「中酸実」(なかすみ)と言ったものが転じてきたとかと、諸説がありはっきりは分かりません。ただ、現在でも「ナス」だけでなく「ナスビ」とも呼ばれているので、こうした呼び名から発祥した名前であることは間違いないようです。

 ことわざに「おやじの小言となすびの花は千に一つも無駄がない」とあるように、花の咲いたナスは必ず実をつけると喜ばれました。今でも、ナスの花には無駄がないのですが、その花と並び称された「おやじの小言」の方は、果たして、どうなのでしょうか?おやじの小言が無味乾燥になってしまうのは考え物ですが、ナス自体には、とくに味はありません。それだけに、味付けがしやすく様々な料理に使える便利な食材として人気があります。

 石川県や香川県には、そうめんとナスを使って煮物にする「なすそうめん」という郷土料理があるようです。これから、暑さが本格化してきます。是非、ナスを使った美味しい料理をお召し上がりください。

出荷状況

 淀橋市場の東京新宿ベジフルの出荷カレンダーには、

●ナス/栃木県はが野農協=通年。同しもつけ農協3月上旬~10月下旬。同那須野農協=3月中旬~10月下旬。群馬県甘楽富岡農協=6月中旬~11月上旬。同佐波伊勢崎農協=3月上旬~10月下旬。同前橋市農協=6月下旬~10月下旬。高知県土佐あき農協=10月中旬~翌年6月下旬。

●長ナス/茨城県常総ひかり農協=6月下旬~10月下旬。熊本県熊本市農協=9月下旬~翌年6月下旬。同鹿本農協=9月下旬~翌年6月下旬までが出荷時期となっています。   (W)