日本のトマトの歴史

 2019年に、最も食べられた野菜ランキング(タキイ種苗アンケート調査)でタマネギ、キャベツに次いで堂々の第3位に入ったのがトマトでした。

アンデス山麓の空中都市マチュ・ピチュ

 トマトの原産地は、南アメリカのアンデス山脈高原地帯で、メキシコのアステカ族がこの地からもたらされた種のトマトを栽培していました。トマトという名前は、古代メキシコ語で「ふくらむ果実(かじつ)」という意味の「トマトゥル(tomatl)」からきているようです。

 16世紀になると、メキシコの征服目的で上陸てきたスペイン人(エルナン・コルテス)によって、トマトは欧州に持ち帰られ、そこから世界に広がっていきました。ちょうどこの頃、日本は戦国時代で、NHKの「麒麟が来る」の主役である明智光秀等が活躍していました

坂本城址公園の明智光秀像(滋賀県大津市)

 トマトが日本に伝来したのは、江戸時代初期にあたる寛文年間(1661-1673)で、出島のある長崎に伝えられました。ちなみに、日本の3大うどんの一つである秋田の「稲庭うどん」の創業家とされる「稲庭吉右左衛門」が、うどんの製造を始めたのが寛文5年とされています。なお、当時のトマトは、観賞用で「唐柿」と呼ばれていました。日本で食用として利用されるようになったのは明治以降で、さらに、昭和になるとさまざまな品種改良が行われました。

 トマトの分類

 野菜の食品としての分類は、「淡色野菜」「緑黄色野菜」「いも類」となっています。このうち、緑黄色野菜と呼ばれる野菜は日本に約50種ぐらいあります。緑黄色野菜は、可食部100g中にベータカロチン(ビタミンA)が600マイクログラム含まれているものを基準としています。ところが、トマトやピーマン上記の値に達してません。それでも、これらの野菜は食卓に上る頻度が高いため緑黄色野菜に入っています。

 また、野菜には食べる部分による分け方もあります。それが「果菜類」「葉菜類」「根菜類」です。トマトは、完熟した果実を食するため、スイカ、完熟ピーマン、唐辛子、白瓜、メロン、イチゴなどと同類の「果菜類」のグループに属しています。

トマトの断面とゼリー状の胎座増生部

 私たちは、トマトの果実部を食べていますが、果実は「果皮」と「胎座」に分かれます。また、果皮は「外果皮」「中果皮」「内果皮」で構成されています。一方、果実の中心部とその周りを胎座と呼び、その組織の表面に種が着いています。野菜などの場合、その発育中に胎座増生部という組織が胎座の外側に出来てきます。トマトを切ったときに、中がゼリー状になっている部分がありますよね。トマトの場合は、それが胎座増生部なんです。では、なんでこのゼリー状の中に種が入っているのでしょう。それは、動物がトマトを食べようとして噛んだときに、このゼリー状の胎座増生部と一緒に種が外に飛び散るようにするためです。

桃太郎の開発と美味しいトマトの見分け方

 トマトは、品種改良を繰り返しながら、私たち日本人の食生活の合うように改良されてきました。現在、もっとも人気があるのが、桃太郎系の品種です。桃太郎が登場する以前のトマトは、樹上で完熟させたものは出荷途中や店頭で傷んでしまいました。そのため、まだ青いうちに収穫して、輸送途中で追熟させたものが店頭に並べられました。しかしこうしたトマトは赤く色づくものの、食味も悪く香りもないため、消費者から大変な不評を蒙りました。

 そこで、樹上で完熟したトマトを出荷するため知恵を絞って作られたのが「桃太郎」でした。「実を固くする」「食味をよくするために糖度をあげる」「消費者好みのピンク色にする」。開発者たちは、これらの課題に対し、長い年月をかけて挑戦しましたそして、ようやくたどり着いたのが「ピンク色」をした大玉の桃太郎だったのです。1985年にタキイ種苗から発売された桃太郎は、あっという間に市場に受け入れられ、日本中に広まって行きました。現在、私たちの食卓に上っているトマトの大半が桃太郎系のトマトです。

次に、トマトを購入する場合の見分け方を見てみましょう。

1.へたを見よう= トマトはへた部分の水分の蒸発が早いので、へたから先にしおれます。「へた」の「へた」っているものは避けましょう。

2.頭を見よう=頭のてっぺんから白い線が星のように放射状に伸びているものは、うまみ、甘みが詰まっています。放射状に白いラインに注目しましょう。

3.持って重いもの=トマトは表面が固くて、ずっしりとした重たいものを選びましょう。

トマトのすごい栄養

 トマトが赤くなると医者が青くなると言われるほど、トマトには栄養が詰まっています。

栄養満点なトマトたち

・リコピン=とくに代表的なのが赤い色素の元となる「リコピン」です。リコピンには「抗酸化作用」「がん」「動脈硬化」の予防に効果があります。また、リコピンは、β-カロチンの2倍、ビタミンEの100倍の活性酸素消去能力を持つことが報告されています。

・クエン酸=トマトの主な酸味の成分が「クエン酸」です。食欲増進効果があります。食欲不振による夏バテの解消にも一役立ちそうです。

・ビタミンC=ビタミンCは人間の体内では合成されない栄養成分で、美容のもとと言われる抗酸化作用、そして、免疫を活発にする免疫賦活作用があります。トマトには通常100g当たり約20mgのビタミンCが含まれています。

・ミネラル=ミネラルとは生体に必要な無機質の総称です。「カルシウム」「鉄」「カリウム」「マグネシウム」などが代表的なミネラルで、ビタミンと同じように、動物にとって不可欠な栄養素なのです。トマトには、このミネラルが豊富に含有されています。

 トマトには、このほかにも水溶性の食物繊維「ペクチン」など、豊富な栄養が含まれています。また、カロリーも低いのでダイエットにも向いています。

淀橋市場の出荷状況

 淀橋市場の卸会社・東京新宿ベジフルの出荷カレンダーによれば、トマトは北海道から沖縄まで全国から入荷しています。

 北海道が6月上旬から11月中旬。青森、秋田が7月上旬から11月上旬。福島が6月下旬から11月上旬。茨城が5月上旬から7月下旬と9月上旬から11月下旬。栃木が9月上旬から翌年の8月上旬。群馬が10月上旬から翌年の7月中旬と7月下旬から11月上旬。千葉が9月上旬から翌年の7月下旬と6月下旬から9月下旬。静岡が通年。愛知が9月上旬から翌年の7月下旬。熊本が9月下旬から翌年の6月下旬。宮崎が11月下旬から翌年の6月上旬。沖縄が4月下旬から5月中旬。11月下旬から2月下旬となっています。

 免疫力を高める栄養豊富なトマトが日本全国で栽培され、私たちの食卓に届けられるのは、ほんとうにうれしいことですね。(H)