業界のみなさんと接することで経済の動き等が見えてきます

東京都庁に採用となったのが平成11年ですから、今年で18年目となります。採用後は、福祉局、総務局、都市整備局で仕事をし、平成28年4月に淀橋市場の場長として、現在の職に就きました。
それまでの職場では、主に人事や文書・法務といった内部管理的な業務を担当する機会が多かったので、都民や事業者の方々と直接やりとりする場面はそれほど多くはありませんでした。
ところが、市場に来てみると、業界のみなさんと接する機会がとても多く、これまでとは全く違う印象を受けました。
私にとって、こうした機会を得たことは大きなメリットだと感じています。それは、みなさんと触れあえることで、世の中の経済の動きや、民間のみなさんの考え方などを知ることができるからです。
また、開設者である東京都の一事業所長として、現場を預かる立場の私にとって、長年、市場で働いているみなさんの状況を直接知ることができるのは、市場を円滑に運営していく上で、とても重要なことだと思っています。

現場で働くみなさんの姿を知ることで様々な課題が見つかります

今、私は現場を知ろうと思い、日々、場内の卸売場等を巡回することはもちろん、時間の許す限り、場外から買い出しに来られる八百屋さんの店舗にも足を運ぶようにしています。八百屋さんを訪問する前に抱いていたイメージは「昔ながらの店舗販売を主体とした営業スタイルのお店が多いのではないか」というものでした。
しかし、そうした思いこみは実際に現場を回ってみて、見事に打ち砕かれました。とくに、若い世代の八百屋さんたちは、独自に商売を考えて工夫しています。たとえば、ツイッタ―やメルマガなどのSNSを利用して仕入れた商品や旬の情報を顧客に直接知らせたり、ネットの情報を見て来店したお客さんに割引サービスをしたりして、お客さんの囲い込み知恵を絞っています。
一顧客として八百屋さんを見たとき、その良さはなんといっても対面販売にあると思います。八百屋さんに行くと「この野菜の産地はどこだ」とか「今が旬で美味しい時期だ」とか「この野菜はこうして食べるとうまい」とか、いろいろなこと教えてくれるので、普段はなじみの薄い野菜や果物でも「買ってみよう」という気持ちになります。
八百屋さんは地域密着型で商売をしているケースがほとんどなので、常連さんが多く、そのうえ地域とのつながりが強いという特徴があります。そのため、お客さんは大半がリピーターということもあるようです。ただ、それだけに、一見のお客さんが店の奥までは入って商品を買うのは、ちょっと勇気がいるような気がします。そういう意味で言えば、一見のお客さんを増やす仕掛けとして、ITの活用は効果的かもしれません。
ある八百屋さんが、「昔は八百屋さんが各家庭にご用聞きに廻って注文を取って届けていたのに、今はスーパーが配送サービスをして、八百屋さんの方は人手不足等もあり、そういうことが難しくなってきている」と、現状の一端を話してくれました。
野菜は年配者には重いので、持って帰るのに一苦労というところがあります。高齢化社会の今日、かつて行われていた御用聞きと配送サービスを再び八百屋さんが、ITの活用や共同配達等により、効率的に行う仕組みを構築できれば、商売を伸ばす有効な手段になってくるかもしれません。

都心の住宅地に立地する市場。それだけに地域との交流に力を入れています

淀橋市場は、中央線大久保駅や東中野駅から徒歩で行けるほどの好立地で、八百屋さんの買い出しにも便利な場所に位置しています。また、東京都の市場の中では例外的に、住宅街に立地しており、周囲にはたくさんの方々が住んでいます。
私たちは、こうした近隣の方や地元区との共存共栄を図るとともに、「開かれた市場」として、市場が果たしている公共的な役割への理解を深めていただくため、地元小学校の社会科見学を積極的に受け入れたり、地域のみなさんに「市場祭まつり」のご案内をしたりと、地域との交流に力を入れています。

 

活性化のシンボル「イチバの日」と将来の市場を拓く「経営展望」の実施

淀橋市場は東京の中でも、八百屋さんが多く取引に集まってくる指折りの市場です。こうした八百屋さんを応援するために、普及活性化委員会のみなさんが「イチバの日」などを設けて商いの後押しをしています。
「イチバの日」のような地道な取組は継続が難しいのですが、淀橋市場の活性化の取組は、活動しているみなさんの情熱が途切れることなく注がれているため、平成20年から現在まで続いており、中心メンバーが知事から東京都功労者表彰を受賞するまでの高い評価を得ています。
淀橋市場では、平成27、28年度に、農水省の方針等を踏まえて経営展望を策定しました。展望の中で、29年度から5年間で取り組む施策をまとめましたので、引き続き業界のみなさんと知恵を出し合って着実に実施していきたいと考えています。
もちろん、実施に当たっては粘り強い取組が求められます。実現が困難な課題にぶつかったとしても、市場に関係するお一人お一人と知恵を出し合い、みなさんが納得できる解答を引き出し、よりよい市場を構築していきたいと思っています。
今、市場流通はその数を減らし、市場の在り方を問う声も聞こえてきます。しかし、安全、安心な生鮮食料品を円滑に供給するという公設市場の役割は極めて重要なものです。公平で公正な取引を守る市場の役割を、一人でも多くのみなさんに知って頂きたいと願っています。(談)